報復
その衝撃と言うのはこれを伝えるものの心を切り刻み、完膚なきまでに叩きのめすに違いなかった。口に出すのも恐ろしいし、絶望的で救いもなかったろう。
20××年、地球は空から降ってきたものによって滅亡しようとしていた。それも他のものの意志で。
他の者とは地球以外のものと言う意味だろうし、未知のものとも言えるだろう。
それは隕石でもなく、彗星でもなく、まして偶然の産物でもないと思われた。何しろ高層ビルほどの大きさのミサイルの様なものが空から飛来し、地球の表面に接触すると同時に鮮光を放って地響きを立てた。
最初に異様な軋み音をあげて裂けたのは、文明の象徴のように空に聳える高層ビル群で、ついで、ドーム状の建築物や、愛着のある歴史的建造物が崩壊し、高架線は飴細工のようにひしゃげて倒壊した。
それを見るにはあまりに忍びない光景だった。だがそれは序章にしかすぎず、時間と共に惨事は深刻さを増した。
それと言うのもそのミサイルの様なものは一つや二つではなかった。そしてそれらは地球の深部にまで突き刺さり、容赦なくすべてを切り裂いた
半狂乱で逃げ惑う哀れな人々。地獄の惨状が展開されていき、これは悪魔の仕業だという呪術師が現れ、逆に神が世界を変えようとされているという宗教家が演説した。だが誰もがどうする事も出来ないでいた。これほどの世界の混乱は他に類を見なかった。
しかし軍部を持つある大国は黙っていなかった。
そしてその軍は世界有数の軍備を誇っていた。一日目は黙って状況を分析していたが、このままではあと数日で地球が崩壊してしまう事を知ると、そのミサイルらしきものの軌道を精緻に計算し、その軌道を逆に追うような格好でそれがどこから来たのか割り出した。
そして地球上にある、あらゆる兵器を無数のロケットに搭載して軌道上に放った。おびただしい数の核兵器と言っていいだろう。
それは破れかぶれの、復讐であり、報復に違いなかった。
地球が痛々しい断末魔を迎えた後、ミサイル群は地球からはるか離れた軌道上にあった。そして燃料もついに尽きようとした頃、前方に惑星が出現した。この星こそ憎い敵の星なのだろうか? だがそれは青く輝く美しい天体。
どうしてそれを回避できなかったのだろうか?
そして、人類は知っていたのではなかったろうか?
超高速で空間を移動するという行為そのものが、時間と空間を奇妙に歪ませるという恐ろしい事実を……。
ああ、ミサイルは未来から飛んできたのだ。
おしまい
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