未来犯罪
人相の良くない男が夜道を歩いていた。
なにやらスーツケースを小脇にかかえ、ただならぬ気配だ。コートの襟を立て周囲を注意深く見回している。怪しい男である。
そこにいきなり通せんぼをするような格好で別の男が現れた。男がびっくりして道路に尻餅をついた。
「あんた誰だ!」
男が言うとその男が答えた。
「私は未来警察の者だ。お前が銀行強盗を犯すことが判明したので犯罪前に先回りしてきたのだ。どうだ恐れ入ったか! 未来犯罪防止法によってお前を逮捕する」
男の顔が一瞬ひきつった。
「これは恐れ入りました。お見通しだったんですね」
するとそこにまた別の男が突然現れた。男は未来警察だと名乗った男に手錠をかけた。
「なにをするんだ! 私は未来警察の者だぞ。知っての上でか」
その男が答えた。
「私こそ未来警察の者だ! 未来犯罪防止法でお前を逮捕する。お前は取り調べ中、この男が無抵抗なのに暴行して殺してしまうのは既に分かっているんだよ!」
「……!? そ、そうなんですか」
おしまい
※画像は「いらすとや」からお借りしています