未奇との遭遇
あるとき宇宙の彼方から電波に乗って宇宙人のメッセージが地球に届いた。ついに人類は永年の念願であった地球外知的生命の存在を確認したのだ。
世界の人々が歓喜した。彼らはもののわかった連中で、お互いの文化交流を望むというメッセージを送ってきた。
無論、警戒を呼びかける有識者もいたが大半の人が彼らは善良な宇宙人だと主張した。それから間もなく、彼らから挨拶に伺いますというメッセージが届いたので、世紀の大ニュースとなった。
失礼があってはならないと地球を代表する各国の首脳が集まった。彼らは正装をして人間の印象を少しでも良くしようと気を遣った。
万が一に備えて後方には見えないように軍隊が待機していた。
そして彼らが地球に降り立つと予告した時刻になったのだが、彼らは現れなかった。いくら待っても姿を見せないのだ。
各国の首脳たちも科学者たちも彼らが嘘をつくような種族ではないと信じていたので、誰もが口をきかず、重苦しい時間が流れた。
地球の代表者の米国の大統領は痺れをきらせて、部下に彼らと至急連絡を取るように要請した。
少したって通信士が通信機を持って大統領の前に現れ、血相を変えながらこう言った。
「彼らはとっくに来ているといっています。もう地球上にいるらしいのです」
「ど、どこに居るというのだ」
大統領がそういうと通信機から彼らの大きな声が流れた。
「大統領、あなたの肺の中ですよ。我々は地上に降りたつ瞬間に宇宙船ごとあなたの鼻の中に吸い込まれてしまったのです」
大統領は顔を紅潮させ、まもなく気絶した……。
おしまい
※画像はO-DANからお借りしています