発狂した宇宙人

書き溜めた短編(S&S)をビヨンドで動画化のご紹介、短編(テキスト版)の掲載その他雑記などのブログです

夢の中の記憶 4

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 第四日目の記憶

 記憶の迷路に迷うようだった。もしかしたら私はこの夢を今までに何度となく見ていたのかも知れない。既視感が繰り返されるような妙な感覚を覚えた。
 記憶の錯覚、誤覚なのだろうか? 次に私の脳裏を掠(かす)めたのは二重人格という言葉だった。私の中に実はもう一人の人格がいてそれが突然出現したのか? わからない。精神科医を尋ねたほうが良いのだろうか? 
 もしも… と私は考え出した。仮説を立ててみる事にした。突拍子もない仮説だ。仮に夢の中に、いやこの世界と別な異次元の世界に、田辺春樹という私と同姓同名の人物がいたとしたら……。

 何を考え出しかのかという自分がいた。しかし私は考えていた。

 

 現実の自分を田辺Aそして夢の中の自分を田辺Bとしてみよう。
 夢の中で田辺Aは、最初は田辺Aの記憶だけしか持たないが、次第に田辺Bの記憶を思い出し、共有していく。しかし田辺Bからみると田辺Aは無視されているかのように、田辺Aと記憶を共有しない。そして田辺Aは田辺Bの記憶に最終的に支配されそうになる。そこに不安や恐怖が生まれる。
 なんの話だと思う自分がいる。なにがなんだかわからなくて混乱してしまう自分がいる。たかが夢だぞばかばかしいと思う自分もいる。その日は夢を見ずに眼を開くと朝が来ていた……。

 

 

                 つづく

 

 

                  ※画像はO-DANからお借りしています