発狂した宇宙人

書き溜めた短編(S&S)をビヨンドで動画化のご紹介、短編(テキスト版)の掲載その他雑記などのブログです

恋心

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 学生のユウイチがためらいがちに言った。

「カナエ。最近、僕を避けてないか?」

「……そんな」

「だって、なかなか会ってもくれないじゃないか」

 短大生のカナエが俯いて言った。

「だって最近、ユウイチが変わったから……。 以前のユウイチのほうがわたしは好き」

「前の僕は無口でろくにしゃべらなかったし、暗かったのに?」

「でもわたし、そんなユウイチが好きだったの」

「……」

「今のユウイチは前向きだし、おしゃべりで明る過ぎるのよ」

「楽しい男のほうが好きじゃないの?」

「わたし、実は陰のある男に惹かれるタイプなの」

「以前の僕は受験に失敗し、親にも死なれて落ち込んでいたんだ」

「でも、そんなユウイチが好きだったの。守ってあげたかったのよ」

「えっ? あの頃の無気力な僕が好きだったの? 今は立派に職についてがんばってるというのに」

「がんばってる人って好きじゃないの。悩んで落ち込んでないとだめなの」

「……そ、そんなのってむりだよ」

「じゃ、終りね」
 

 ユウイチの表情が変わった。

「君がそんな男が好きだったなんて知らなかった。僕はそんな男に戻る気はないし、あきれたよ、君なんかともう居られない。さ・よ・な・ら」
 

 ユウイチが立ち去ろうとするところに後ろからカナエが叫んだ。

「でも、わたし女をふる男は好きなの!!」

「――そんなこと言われたって、そんなこと……」
 

 間が少しあいてユウイチが言った。

 

「やっぱり僕はカナエが好きだ!!」

 

「そういう風にすぐ女を許す男はわたし大嫌いなの!」

 

「……そうなの?!」

 

 

              END

 

 

 

              ※画像は「いらすとや」からお借りしています