発狂した宇宙人

書き溜めた短編(S&S)をビヨンドで動画化のご紹介、短編(テキスト版)の掲載その他雑記などのブログです

幽霊たちのララバイ ニ.

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  ★その二

 

「ご臨終です」

 医師は静かに家族にそう告げ、ベッドの老人は眠るように安らかに息を引き取った。今生の別れである。

「ちぇっ!」

 誰かが舌打ちした。しかしその声は遺族には聞こえない。なぜなら舌打ちの主は老人の先祖の幽霊達であるから……。

 

「伸二郎。ようこそ霊界にと歓迎したいがそうはいかないんだ」

 霊になった伸二郎が驚いた。

 

「なぜです。御先祖様?」

「なぜって幽霊は死なないんだぜ、だからもう霊界は飽和状態なんだ。今じゃ畳一畳のスペースが各個人に与えられた僅かな空間だよ、おまえが来たんでまた狭くなった」

 

「……」

 

「最近の霊は中々成仏しなくてね、霊が増えすぎなんだよ」

 

「そ、そうなんですか」

 

 ふと、伸二郎がまわりを眺めると恨めしそうな幽霊の大群が居て、誰かが後ろの方で「押すな! ソーシャルディスタンスを守れ」と怒鳴った。

 

 

               END

 

 

                    ※画像はO-DANからお借りしています

幽霊たちのララバイ 一.

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 ★その一

 

 橋を渡り柳の下を通りかかると、生暖かい風が着物の女の襟元に吹きつけた。なんだか重苦しい空気を感じる。彼女が幾分早足になり、柳の下を一気に通り抜けようとした瞬間、それはいきなり現れた。

 髪を振り乱し、青白い陰気な顔に白装束という出で立ちだ。

恨めしや、おお恨めしい」

 驚いた女は

「あーれーっ!」

 と叫び、気絶でもしたかと思った途端に女の首が伸びた。

「おまえさん。いきなり出てきてびっくりするじゃないの!!」

 女は怒っていた。

「幽霊が霊界に出てどうすんのさ。幽霊は人間界に出なさいよ」

「そうだよね……」

「あたいが轆轤首だから良かったけど、鬼にでも見つかったら地獄に連れて行かれるよ」

「ああ、でもなあ」

「どうしたの? 」

「おいら人間に殺されたから人前に出るのが怖いんだ」

「しょうがないねえ。だから恨めしいんじゃないのかい? しっかりおし!」

 その幽霊は落ち込んだ様子で橋の下に消えていった。

 

              おしまい。

 

 

                    ※画像はO-DANからお借りしています

世界びっくり疑?・事録スペシャル 三.

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 ★フェルミパラドックス解決

 

 この度、米政府は宇宙人の存在をノルウェー科学チームが公式に発表していた事を明らかにした。

 この驚くべきニュースは各国の有識者を驚嘆させたのは言うまでもないが、総合科学ジャーナル誌Natureネイチャーに掲載された詳細を抜粋し紹介しよう。

 

 ――宇宙人の痕跡は隕石の中に隠されていた。ノルウェー科学チームは約六千年前の地層から発掘された隕石の中に自然界に存在しない鉱石を発見し、その中に厳重に保護された未知のDNAを発見した。チームによればその鉱石自体が宇宙船であったというのだ。

 しかもそのDNAはSTAP細胞スタックさいぼうによって生育、再生可能だというのだ。研究が進めば我々は近い将来宇宙人の真の姿を目の当たりにする可能性がある。

 

 しかしこの件に関しては様々な疑問が浮かぶ。まずSTAP細胞がどういうルートでノルウェー科学チームの手に渡ったか全く明らかにされていない。

 また宇宙人の形態についても全く報道されていない。ただ、宇宙人は研究チームのしつらえた特殊な水槽の中で順調に成長しているという事が、一研究員の証言から分かっている。

 

 それにしても隕石が地球に飛来したのが六千年前である事や、隕石表面の分析から少なくとも隕石が一億年以上も宇宙を旅していたというのだからロマンを感じざるを得ない。

 

 宇宙人とファーストコンタクトも時間の問題だと言えそうだ。ただ宇宙人が仮に息を吹き返したとしても記憶があるのか? 今後、数々の疑問が浮かび上がりそうな気配である。

 

 

                END

 

 

 

                    ※画像はO-DANからお借りしています

世界びっくり疑?・事録スペシャル ニ.

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 ★謎の古代文字

 

 イースター島(現地名はラパヌイ)はモアイ像と独自の文字体系を持ったロンゴロンゴ文字で知られている。

 それらは宇宙からの訪問者が残していったものであるなど、常軌を逸した様々な仮説を提供し続けていたが、ある時二人の日本人の手によってその文字はついに解読された。全世界が注目する快挙であろう。

 

 彼らは長年、古代文字と暗号の研究をしてきた安野と青柳という優秀な研究者だった。解読法には差分解読法、線形解読法等、様々な種類があるのだが、Sコンピュータを最も有効な方法で駆使したのは言うまでもない。

 また専門的な部分を語ると読者が閉口されるだろうから、率直にその顛末だけを伝える事としよう。

 

 つまりロンゴロンゴ文字の冒頭は次の通りである。

 

『東洋の年号がRで始まる国の二人の者が、我がロンゴロンゴ文字を最初に読むものであり、彼らは名の頭文字にともにAがつく者に違いないだろう。彼らはその世界の人類に称賛される事だろう。だが我々はロンゴロンゴの秘密を知られたくない故に彼らを永遠に隠すだろう』

 

 彼ら二人がその直後にイースター島で行方不明になったのは単なる偶然であったろうか? この事件は大変なセンセーションを巻き起こしが未だに真相は解明されていない。

 

 それにしても残念なのは、残された文字の大半の解読が中断したままである事だ。

 

 

 

                END

 

 

  

                    ※画像はO-DANからお借りしています

 

 

●このストーリーはユーチューブで動画化してあります。

 興味のある方はどうぞ


古代文字の秘密

 

世界びっくり疑?・事録スペシャル 一.

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 ――信頼できかねるスポークスマンの伝えるところによる

 

時効の壁

 政府による法改正の発表
 

 ――この度、新体制のリーダーであるJ・B氏に祝電を送ったS総理は、前々から用意していたある改革に乗り出した。

 その内容とは我が国に於いて死刑を除く諸犯罪に、時効制度が依然として存在することを愁いて時効の完全廃止を強く要請するものだった。この法改正案は早速、国会において討議、審議され、多数決の原則において可決されるところとなった。
 

 しかし事があまりに急であるため、完全に時効が廃止になる前に特別優遇措置が施されることとなった。

 すなわち、それは犯罪者が自らの犯罪における時効の三か月前までに役所もしくは警察に申し出れば、たとえその罪が重罪であってもそれを帳消しにすると言う云々、慈愛に溢れた特別処置であった。しかも特別恩赦(金一封)までが付くと言うのだ(詳細は割愛)。

 この一大ニュースは各一流紙のトップを飾り、ネット上でも大きく取り上げらた(SNS含む)そしてその三か月後にはそれを真に受けたごく一部の(時効ぎりぎりの)そそっかしい犯罪者たちが警察等に出頭し、めでたく穏便に逮捕された。
 

 尚、犯罪者たちはこの仕打ちに恨み節を吐いたと言うが、首謀者の総理は新聞社のインタビューに「世の中そんなに甘くありませんよね。まぬけですよね」というコメントをだけを残し、多くは語らなかった。 ――らしい。

 

 

                END

 

 

                   ※画像はO-DANからお借りしています

ブラックミラー

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 ネットフリックスで面白いの見つけた。

Netflix(ネットフリックス)は、世界最大級の定額制動画ストリーミングサービスですが、その中で面白いのがあるのでご紹介です。但しこれは個人的な主観ですからその辺はよろしく。

 

 ●ブラックミラー 

 2011年から放送されているイギリスのSFアンソロジーシリーズです。
 

 日本で言えば、世にも奇妙な物語みたいなものですが、このクオリティが極めて高い。昔の世にも奇妙な物語はかなり面白いものもあったと思うのですが、最近のものは観るに堪えないものがあります。見る度に失望している。

 この手のストーリーは作るのがかなり難しいと思います。斬新な発想こそ命なのでこの手の話は量産しにくいと思えます。

 ところがこのブラックミラーはイケてます。
 視聴者を引き込んで離さない。ストーリーが見事です。やられたって感じですかね。鳥肌が立ったエピソードがいくつもあります。とにかく観ていただきたい。
 このお話の一編一編はネット上に事細かに解説しているサイトがあるのでそれを参照していただければいいかなと思います。

 ――ポスト・ヒューマン時代のわたしたちを映し出す漆黒の鏡 このキャッチコピーがいいです(作った人尊敬) 近未来のおぞましい未来に警鐘を鳴らすような作品群です。
 とても刺激になるし、少しでも物語づくりの参考にしたい作品です。

 

 

 

                   ※画像はO-DANからお借りしています

インセンティブ・ムービー

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 最近めっきり、面白いテレビが減りました。ドラマもマンネリだし、バラエティも阿保らしいし、テレビを録画までして観ようとする番組がないのです。

 昔はテレビが観たくて早く会社から帰ったこともあったくらいなのに、今は何を観てもつまらない。ネットもイマイチだし、ミキヤにはゲームのほうがまだ面白いのです。

 そんなある時、ポストに宛名のない茶封筒が入っているのを発見しました。おおかた、近所のスーパーかなにかの宣伝だろうと封を開けると、白いディスクが一枚入っていました。説明書きもなにもないのです。

 躊躇したミキヤでしたが、レコーダーに入れてみると、いきなり映像が再生されて見覚えのある人物の顔が現れたのです。黒いセーターを着てソファに座っている。

「やあ、こんにちは。やっぱり見ましたか、見ると思っていました」

 そこにはミキヤそっくりな男が……。 というか、もしかすると彼自身かもしれないのですが、妙に馴れ馴れしく、微笑みさえ浮かべてミキヤに語りかけてくるのです。

「あなたは最近のテレビや、映画に飽き飽きしていたのでしょう? だったらこれをご覧なさい。スリルがあって退屈はしないと思います。そう、実はこれからあなたの未来についてお見せするのですが、怖かったならすぐにでも、スイッチをお切りなさい。無理に見せる気なんてないし、強制なんて出来っこありませんから。スイッチを切るなら今です。後になると切れなくなります」

 画面の中のミキヤみたいな男はそう言うと暫く、画面の中から覗き込んでいましたが、ミキヤがレコーダーを停めないのを確認すると、満足そうに頷きました。ミキヤがとても驚いてその画面に釘付けになったのは言うまでもありません。

 画面が切り変わりました。

 武装をした一人の男が道路にいます。それは中東あたりの兵士か、頭にターバンを巻いて目つきが険しく、精悍です。これはアクション映画かな? それとも戦争映画かな? そんな風にミキヤは思いました。

 その男は最初、道路に立っていましたが、あたりを入念に観察してなにか目標でも発見した様子になり、身をかがめて走り出しました。とても俊敏な動きで、鍛えられた兵士、忍者の動きさえ連想しました。

 なんだか心臓がドキドキしてきました。映画をみて胸がときめいたというのはもう何年も、いやもしかすると何十年もなかったことです。

 面白いのです。次に何が起こったかというと、その武装した男を警官が発見して、後を追ったのです。この時その警官が見慣れた日本人なので、舞台は今の日本なのだとミキヤは思いました。しかし、その武装兵は追ってきた警官を交差点の角で待ち伏せして射殺しました。リアルでした。手慣れた兵士の動きです。

 喉を撃たれた警官が血まみれになって道路に転がりました。その武装兵はとどめを刺すように執拗に弾丸を警官に撃ち込みました。

 残酷なシーンでした。そして兵士は再び駆け出したのです。するとなにやら、その風景が見覚えのある場所なのです。デジャブでしょうか、幻覚でしょうか、訳も分かりません。ただミキヤはもう画面に引き込まれていました。鳥肌が立ちます。

  胸騒ぎがします。嫌な予感がします。ついに武装兵の顔がアップになりました。浅黒い顔色、鋭い眼、そして引き締まった口元。

 その顔がミキヤ自身に生き写しなのです。どうみてもミキヤなのです。なんだかとても怖くなってミキヤはレコーダーを停めようとします。だが止まらない。ミキヤはレコーダーを何度も思い切り叩きました。

 

 男は一軒の家の前に立ちます。とうとう目標を見つけたのでしょうか?

 そうして家の窓に小銃を構えて武装兵は立ちました。

  ミキヤの家の窓ガラスに人影が映ります……。

 

 その様子を別の窓から眺めている者がいます。黒いセーターのミキヤです。

 

 

 

                おしまい

 

 

 

                    ※画像はO-DANからお借りしています