発狂した宇宙人

書き溜めた短編(S&S)をビヨンドで動画化のご紹介、短編(テキスト版)の掲載その他雑記などのブログです

2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

悪魔就職する

その悪魔は自分の奇抜な発想に多少酔っている節があった。そう、彼こそは醜悪で怖い顔に密かな笑みを隠したあの魔族の代表である。 昨今は地獄コロナの影響もあり、悪魔の仕事がめっきりと減った。それに最近の人間たちは自己中が多く、地獄に落ちてきて悪魔…

タイムマシンクイズ

●問1 博士はタイムマシンをつくりました。 人間を過去にも未来にも連れて行ってくれるマシンをつくりだしたのです。 さて、そこで問題です。 そのマシンにまずあなたが乗り込みます。そして十年後に目盛りを合わせます。 まだ発進のスイッチは押しません。 …

令和竜宮城

会社から帰るとアパートの前に見慣れぬ美人が立っていた。疲れていた俺は誰だろうと思いつつも美人をスルーして部屋に入ろうとした。 でも、その美人は俺に声をかけてきた。 「お待ち申しておりました」 品のいい声だ。俺はびっくりして立ち止まった。俺は美…

自殺者の手紙

この手紙を見て君がどういう顔をするのか僕にはおよそ想像がつく。たぶん君の顔にはもう血の気もなく、意識も霞んでいるかもしれない。 実をいうと君は僕に確実に殺されるのだよ。 君が目を覚ました時にはもう遅いのだ。すべてが手遅れなのだよ。 君の死にざ…

悪夢

その青年は悩みでも抱えたような、憂鬱な顔をして精神科を訪れた。もう何日も寝ていないような疲れきった顔をしている。 看護師が青年の名を呼び、医師がその様子を見て心配そうに青年に話しかけた。 「さあ、おかけになって。だいぶお疲れのご様子ですが、…

おかしな電話

――その男は死ぬつもりだった。人生に絶望したのだ。 男は吹きすさぶ強風の中をその岸壁に向かって歩いていた。真一文字に結ばれた口、頬は青白く、髪はぼさぼさであった。そして男は大きくため息をついて履物を脱いだ。 そのとき不意に電話のベルが鳴った。…

世界珍事件スペシャル

空飛ぶ○○○ 何かが人々の前を浮遊しながら通り過ぎた… 異様なものだ。 どこかで見たことがある。すぐに通報が入って警察が出てきた。 パトカーがそれを追いかけると、それの正体が分かった。 入れ歯だ。それも総入れ歯。 大通りを入れ歯が飛んで行く。 総入れ…

その男

保安官はその酔っ払いを留置所から引っ張り出すと、コーヒーカップをテーブルに置いた。苦み走っていて西部の荒くれ者を相手にしてきた男の扱いは、決して丁重とは言えなかった。 「おい、もう酔いは覚めたかな」 太い声で保安官がそう言うと男もハスキーな…

Magic

――ある時、南米べネズエラ、ギアナ高原の付近で猿とも人ともつかぬ部族が発見された。全世界が注目する大ニュースである。 早速、日本からも研究チームが現地に派遣された。 彼らは動物の皮を身に纏っていて、小柄で少数で言語を使わず、ほとんどジェスチャ…

MONSTER

――怪しいというか、可笑しいというか、何か変なのだ。近頃の妻の様子が。 元々、妻はおっとりしている方なのだが眼つきが最近きつくなった。なにか訳もなくイラついているし、言葉使いまで荒っぽくなった。語調に棘がある。 歩き方もなんだか速くなったし、…

空飛ぶくらげ

――実に不思議な光景だった。 一匹のくらげが見上げる空を飛んでいるのだ。そう、あの海中に漂うくらげが茜色の空を浮遊している。 それは白くて長い触手を空中に棚引かせていた。 最初は小さな点でしかなかった白い塊が次第に大きくなりくらげになった。 昨…

裸婦像

――やわらかな木漏れ日がそのアトリエに差し込んでいた。 画家のアトリエは洋館の二階にあり、壁には蔦が絡まっていた。 窓際には大きなカンパスがイーゼルに乗って置かれてあり、カンパスには見目麗しい裸婦像が油絵の具で見事に描かれていた。絵はほとんど…

現象

――世界が発狂しそうな暑い日だった。 熱帯の太陽がそのまま都会に引っ越してきたような真夏だ。 ぼさぼさ頭に無精ひげの男が血相変えて派出所に駆け込んできた。息を切らし、その瞳はまるで魔物でもみたように怯えている。 「大変だ! えらいものを見ちまっ…

あれはまだ私が小学生の頃だ。 ある夜、家の窓から流れ星を見た。 それは近くに落ちたように見えたから、行ってみると庭の片隅に鍵が落ちていた。 とても小さな、とても精巧な花の模様のある美しい鍵だった。 いったい何の鍵だろうか? なぜか何処かに合うよ…

恐ろしき復讐

――街灯に霧のかかる夕べの事だった。 私は懐かしい女優、鮫島美佐江の回顧展会場にいたのである。というのも私は若い頃、鮫島美佐江に強く惹かれ、彼女の主演映画を殆ど観てきたからだ。 彼女、鮫島美佐江は当時もう三十近くになり、美しさに磨きがかかり、…

帰宅者

――異様なほど暑い日だった。まるで脳みそが茹るほどの暑さだ。 その日は夕方になっても外気は熱風で、まるで日本の緯度が南にずれてしまったようだった。 今日は俺にとって貴重な休日である。 夕方なら買い物に行くのも少しは涼しいかと思ったが、蒸し風呂に…

ロシアンルーレット

ジョン・エリオットは黙って目を閉じ、こめかみに銃口を当てた。引き金に指をかけたところで言い知れぬ恐怖が重く圧し掛かって指に力が入らなくなった。 すでに唇は渇き、目さえ虚ろだ。 怖いのだ。この命をかけたロシアンルーレットがとても怖いのだ。 無理…

夢の導線

『夢売ります』と言うのは、なにも安っぽいCMのキャッチコピーばかりを言うのではない。 それが現実となった世界では、夢の売り買いが、きな臭い気配を発散する。 暗い空気の淀んだ雑居ビルの狭間に、俺は蒼白い顔色のまま懐に銃を忍ばせ、赤い無人タクシー…

password

カレンの衣服は屈強な女兵士によって見事に剥ぎ取られていった。 カレンを蹂躙しているのは、戦闘服に身を包んだ頑健な女兵士ふたりだ。 鍛え上げられ、引き締まったカレンの身体が見る間に露呈されていく。たとえプロレスラーだってカレンをこんなにも簡単…

報復

その衝撃と言うのはこれを伝えるものの心を切り刻み、完膚なきまでに叩きのめすに違いなかった。口に出すのも恐ろしいし、絶望的で救いもなかったろう。 20××年、地球は空から降ってきたものによって滅亡しようとしていた。それも他のものの意志で。 他の者…

もう一つの世界  ●  界世のつ一うも

僕は鏡の中にもう一つの のつ一うもに中の鏡は僕 世界があると信じていた たいてじ信とるあが界世 鏡がただのガラスと銀の板だ だ板の銀とスラガのだたが鏡 なんてとても信じられなかった たっかなれらじ信もてとてんな 僕はまた偏屈で医者から らか者医で屈…

呆れるべき真相(コメディ)

●事件その一 「ワーッ!! ヤーッ!!」 ドラキュラの屋敷から今日も悲鳴がこだました。 このところドラキュラ伯爵の屋敷で夜毎に絹を裂くような女の悲鳴がする。 ――事件か。 早速、時代錯誤のホームズみたいな探偵が真相の究明に乗り出したが、探偵はその真…

シマウマとライオン

――あるところに動物の国があった。 ここではひとまず異次元の世界の話としておこう。そこに住む彼らは確かに動物であったが、人間のように考えることが出来たのだ。 その世界のサバンナに足の速いカイルという名のシマウマがいて、カイルは子供のころから俊…

三つの願い

これは随分と昔の話です。 はるか南方に古代ペルシャ帝国みたいな国がありました。そこに三兄弟が住んでおりました。別に特別な兄弟ではなくごく普通の兄弟です。 兄弟はあまり裕福ではなく、どちらかというと貧乏のほうでした。 三人ともまだ若くお金がない…

異次元のゴロー

「みんなに集まってもらったのも、私は大変なものを発明したかもしれないからです」 博士はそう言い、テーブルの周りに集まっている研究所の連中を一瞥した。大学の研究生達もいったい何を博士が発明したのか、興味深そうに様子を見守っている。 博士はやが…

職業について

人は生まれながらにすべての職業に向いている。 そして人がどんな職業につくかは偶然によって決定される。 パンセの中でパスカルはこう語っています。 なんだか励まされたような、励まされないような微妙なニュアンスです。人生において職業はとても大切な意…

神は死んだ…

太古の事。 嵐、地震、旱魃、これらは全て神の怒りであり、豊作、大漁、これらは神の恵みであると人々は信じていた。 ある年、とんでもない嵐が集落を襲った。これまでにない魔物のような黒い風が家々を吹き飛ばし、濁流は狂気したように人々をのみ込んだ。…

ゴジラについて

ゴジラが誕生したのは昭和29年(1954年)で、私が生まれるのと殆ど同時期でした。 東宝が特撮怪獣映画として世に送り出されて、いつの間にか今年で66年という歳月が流れました。 そして今でも映画は作り続けられています。 今観ても昔同様に私はゴジラに惹…

決断

――あるとき銀河系遥かな遠い宇宙で、ある惑星の軌道が外れた。 まったく宇宙の摂理にも叛くような出来事が突然に起こった。 今となってはその原因を究明したところで正確な答えは出てこないだろうから、回りくどい説明は省略してともかく話を先に進めよう。 …

願い

曇り空の市民公園をジョギングしていると悲鳴がした。 私は聞き耳を立てた。誰かが公園の近くの川で溺れているらしい。 まわりに助けに行けそうな人がいないか冷静に観察したが、これは緊急だと悟り、私が助けに行かなければと思った。 もう四十に手が届く年…