発狂した宇宙人

書き溜めた短編(S&S)をビヨンドで動画化のご紹介、短編(テキスト版)の掲載その他雑記などのブログです

2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

透明

博士が言った。 「私が長年研究していた人体透明薬がついに完成するんじゃ。凄いだろう!」 その助手がちょっと苦笑いして言った。 「なるほど、博士。どうりで最近あなたの影が薄くなったわけだ」 「……」 おしまい ※画像は「いらすとや」からお借りしていま…

どくしん

垢ぬけない男が言った。 「僕はどくしん術をマスターするんだ!」 それを聞いた友人が言った。 「なるほど。読心術をマスターして彼女の心を掴むつもりだね?」 「いいえ、その彼女に振られたから独身術をマスターするんだ」 「…なるほどねえ、そっちのほう…

カタツムリの小説家

カタツムリの小説家に記者がインタビューした。 「先生の作品、最近ストーリーがマンネリだと読者から批判されてますねえ」 「ああ、わかってる」 「えっ? ご自分でもお認めになるのですか? 先生」 「ああ、認めるよ。私はどうしても自分の殻が破れないん…

恋心

学生のユウイチがためらいがちに言った。 「カナエ。最近、僕を避けてないか?」 「……そんな」 「だって、なかなか会ってもくれないじゃないか」 短大生のカナエが俯いて言った。 「だって最近、ユウイチが変わったから……。 以前のユウイチのほうがわたしは…

大きな望遠鏡

「だから、何が見えたというのですか?」 その質問に老博士は黙して答えなかった。 「どうしても世間に成果を発表出来ないとおっしゃるのですか?」 研究開発局の局長は真剣な顔をして博士に質問した。もう陽が沈み星々が輝きだした頃だ。研究所は小高い山の…

矛盾

「大統領閣下。私の発明しましたこの光線銃は全く無敵でございます。なにしろこの光線にあたったものは鋼であれ、ダイヤモンドであれ、超合金であれ、触れたものの全てを完全に蒸発させてしまうのですから」 その規律正しい、科学者であり、軍人であり、発明…

奇妙なひな祭り

――三月のちょうどそれは雛祭りの日の出来事だった。 あまり見栄えの良くない初老の男が、大通りの角の派出所に何かから逃れるようにしてやってきた。顔は痩せていて血の気がない。もっとよく観察すれば、男は息を切らし、表情は熱病にでも侵されたように虚ろ…

あなたはあした死ぬ

「あなたはあしたの正午に死にます」 その個性的な顔立ちの占い師は俺に向かい正々堂々とそう言い放った。 一介の会社員である俺は悪い冗談と思ったが占い師の眼は少しも笑っていなかった。その眼を見ているうちに俺はむかついてきた。会社帰りの街角だった…

氷のプリンセス

雪道で美しい娘を見つけた。 気分が悪そうで悲しい顔をしていた。 近づくとキラキラした氷の涙を浮かべている。 とても気品のある娘だった。 「どうしたのですか? なにかあったのですか?」 声をかけると娘は頽れるように、その場に倒れてしまった。 慌てて…

謎の円柱

あるとき地球に向けて大きな円柱が凄いスピードで迫ってきた。 それは途方もなく大きな棒のようなもので、正体不明だった。 科学者達もなす術すべもなくこれは地球の最後かもしれないと思った。 なんとそれの直径は地球と同じくらいあった。 猛スピードでそ…

自殺志願

男がビルの屋上から飛び降りようとしていた。 それに気づいた警察官が必死に怒鳴った。 「やめろ!君、死ぬんじゃない。早まるな!」 男が答えた。 「悪いけど俺は死ぬ気なんてさらさらないよ。幽霊になって強く生きるんだ!」 「んな……?!」 おしまい ※画…

盲目の三人

「象とはどんな動物ですか?」 ある人が、盲目の三人に尋ねると一人目はこう答えました。 「象とは太い柱のようなものです」 二人目はこう答えました。 「まるで大きな扇のようなものです」 そして三人目はこう答えました。 「硬くなったり、柔らかくなった…

応急処置

あるとき地球の回転が突然止まった。 すぐに神様に報告が入った。 「大変です! 神様、地球が止まりました」 「原因はなんですか?」 「わかりません、いま調査中です。どういたしましょうか?!」 「仕方ありません。応急処置として周りの宇宙の方を回して…

幽体離脱

――幽体離脱した能天気な老人がいた。 老人は自分の寝顔を上から眺めると、スイスイと楽しそうに窓から飛んで行ってしまった。 鳥の気分を充分に満喫した老人だったが、そろそろ辺りが暗くなってきたので、自分の体に返ろうとして一大事が起こった。 自分の家…

カラータイマー

あるときウルトラマンが病院に駆け込んできた。 「先生、胸のカラータイマーの点滅が止まらないんです。どうしましょう!」 医師が診察する。 「どれどれ、身体には別に異常はなさそうですねえ。最近なにか変わった事でもありましたか?」 「実は、生まれて…

宇宙のボールペン

フェルミのパラドックスと言うのは、なぜ未だに地球以外の知的生物と接触できないのかという疑問から誕生したらしいが、ある時、チリのアタカマ砂漠にある電波望遠鏡群が宇宙から来た謎の電波をキャッチした。 謎というのはこの電波が自然電波でなく、人…

過ち

――手術は困難を極めていた。難しい胃癌摘出手術だ。 転移の箇所もあり看護師は何度も私の額の汗をハンカチで拭った。迅速に作業しなければならない。ひたすらに医師である私は作業をする。長い時間を要したがなんとか手術は無事に終了した。 私はようやく安…

青い馬

僕がその馬を見つけたのは駅の近くだった。終電に揺られて、会社の新年会の帰りに若い仲間と三次会まで盛り上がって、仲間と別れ駅からふらふら歩いて帰る途中だった。 まだ酒が残っていたから馬を見ても驚きもしないで素通りするところだった。 だけど僕の…

出来そうもない七つの事 (ギャグ)

ロボットの献血。 ゴジラの調教。 金魚の行水。 キリストの仏門入り。 透明人間のレントゲン。 宇宙での逆立ち。 幽霊のフィギュア・スケート。 うーん… 出来そうもない。 ※皆さんも他に出来そうもない事があったらコメントくださいね! ※画像はO-DANからお…

世界びっくり疑?・事録スペシャル 四

不確定性原理によるアリバイの崩壊 この度、証人殺害事件で起訴された大物政治家の秘書であるK氏は当局に依って身柄を拘束される事となった。この事件は既に報道されているが、K氏のアリバイは大物政治家お抱えの敏腕弁護士によって立証された。 今回の大物…

薄氷の出来事

薄い氷の上に釣り人がいた。 氷に穴をあけてワカサギ釣りである。寒いから男は懐にカイロを入れていた。 しかし待てど暮らせどなかなかワカサギはかからなかった。 もう一度糸を引き上げて、ワカサギが掛かっていなかったら寒いので帰ろうと思ったとき、変な…

夢の中の記憶 最終話

最後の記憶 マンションに帰り、ドアに鍵を掛ける。胸の動揺が治まらない。夢の裏付けをしてしまったのだと思った。現実に私と太田青年がいる。そして夢の中に同じ分身のような人物がいる。そして彼らは私と太田青年に成り代わろうとしている。 あまりにも荒…

夢の中の記憶 8

第八日目の記憶 暗く低い雲の垂れ込めたある秋の日。私はそのホテルの見える丘に立った。 麻布のホテルMを地図上で見つけた時。ぞーっとするものが胸の内に込み上げてきた。しかしまだ半信半疑だった。偶々同じ名のホテルがあるのだと都合のいいように解釈…

夢の中の記憶 7

第七日目の記憶 夢の中でばかげた殺人計画が進んでいる。 有り得ないと思う。夢の住人に物理的な実体がない限り殺人は不可能だとも思う。 だが実に肉迫した夢の映像に心が動揺しないでいられない。夢の最中は実に切実な感覚で脅威が私に迫ってくる。 やはり…

夢の中の記憶 6

第五… 六日目の記憶 深夜に目覚めた私は背中に悪寒を覚えて身動()ぎも出来なかった。 醜怪なもう一人の私の笑みが脳裏に刻まれていいる。仮説が実証されたかのような想いが胸に込み上げてきた。 どうやら二人は夢の世界の住人らしい。そして二人で結託して現…

夢の中の記憶 5

第五日目の記憶 夢を見ていた……。 太田青年が私の目の前にいる。舞台は公園のベンチだ。地面に枯葉が積もっている。秋なのだろう。高木の合間から眩い陽光が射し込んでいる。 私は座り、青年は立ったままだ。 「君は、真面目で働き者だったね。大学は卒業し…

夢の中の記憶 4

第四日目の記憶 記憶の迷路に迷うようだった。もしかしたら私はこの夢を今までに何度となく見ていたのかも知れない。既視感が繰り返されるような妙な感覚を覚えた。 記憶の錯覚、誤覚なのだろうか? 次に私の脳裏を掠(かす)めたのは二重人格という言葉だった…

夢の中の記憶 3

第三日目の記憶 仕事帰りの私は重い足取りで歩いていた。空に黒雲がかかっていた。雲の深淵から黄色い閃光がひらめき、マンションの壁に疾風が吹きつけていた。 ストレスでも溜まって変な夢を見るのか。それにしてもリアルな夢だった。青年の肌の色艶さえ記…