発狂した宇宙人

書き溜めた短編(S&S)をビヨンドで動画化のご紹介、短編(テキスト版)の掲載その他雑記などのブログです

2020-01-01から1年間の記事一覧

不運

ここは霊界。 死んで霊になった男が橋の下にいて、なんだかバカに気落ちしている。 そこに通りかかった幽霊がその男に話しかけた。 「どうしたんだい? そんな浮かない顔しちゃって」 「どうも…」 「どうもじゃなくて、訳を話してごらんよ」 「ここじゃ、わ…

地球最後の……

――得体の知れない疫病ウイルスの流行。天変地異。そして核戦争と続いて人類はついに滅びた。 砂漠化した元大都会には鼠一匹生きてはいなかった。 しかし高層ビルの瓦礫の中からふらりと一人の男が立ち上がった。真っ黒な顔をしていた。服は焼け焦げていた。…

未奇との遭遇

あるとき宇宙の彼方から電波に乗って宇宙人のメッセージが地球に届いた。ついに人類は永年の念願であった地球外知的生命の存在を確認したのだ。 世界の人々が歓喜した。彼らはもののわかった連中で、お互いの文化交流を望むというメッセージを送ってきた。 …

教育時代

世の中なんでも教育だ。 なにせ学歴社会は今だに崩壊していない。だから良い学校に行って、良い企業に就かなければならない。でないと大変な事になる。競争社会なんだから。 そこで塾が流行り、幼児教育が出現し、胎児教育までもが現れた。 そして人々は究極…

未来犯罪

人相の良くない男が夜道を歩いていた。 なにやらスーツケースを小脇にかかえ、ただならぬ気配だ。コートの襟を立て周囲を注意深く見回している。怪しい男である。 そこにいきなり通せんぼをするような格好で別の男が現れた。男がびっくりして道路に尻餅をつ…

宇宙の道案内

宇宙時代、操舵装置が故障して道に迷った高速宇宙船があった。 困った船長が、ちょうど通りかかった貨物船に道を尋ねる。 「ちょっとおききしますが、シリウス第十二番衛星にはどう行くのでしょう?」 貨物船の親父が窓から顔を出して親切に答えた。 「ここ…

閻魔様もびっくり

熊さんと与太郎の会話 「ところで熊さん。地獄にさ、嘘がうまくて人を騙してばかりいる極悪人が落ちてきて、閻魔えんま様に舌を抜かれたんだってさ」 「そうだろう、当然だろうな。嘘つきは泥棒のはじまりっていって、いかんわな」 「それがその極悪人、それ…

霊能者 ミサ

――いつものようにわたしはビルの乱立する繁華街の地下の店で待っている。 『霊能者ミサの館』このネオン看板がわたしの店の名。暗い色調のペルシャ絨毯の敷かれた室内。そして妖艶に着飾ったわたし。 そう、わたしの職業は霊能者。予言者と言ってもいいかも…

一寸の恐怖笑 第六話 

★「紐親父」 ――変な紐親父ひもおやじの話である。 青白い顔をした親父があるととき国立病院にやってきて頭痛を訴えた。さっそく医師が懸命に診察したがどうにも原因がわからない。 しかたなく頭痛薬を与えたが親父の頭痛はより酷くなってその場に倒れてしま…

一寸の恐怖笑 第五話 

★透明人間 透明人間? の話である。 僕が夜道を歩いていると裸で、しかも赤いペンキを体に塗りたくった人と出くわした。事故か何かだと思い 「ど、どうしたのですか?」と問うと 「いや、実は私は透明人間なんですけど透明でいると時々車に撥はねられそうに…

一寸の恐怖笑 第四話 

★「テレビ青年」 登山の好きな青年の話である。 青年が大荒れの天候の為、深い山の中で見つけた洞窟に入ると、なんとそこに人間が住んでいた形跡があった。 寝床があり、なぜかテレビがそこに置かれてあったのだ。 灯をともし、しばらくそこに居るとテレビが…

一寸の恐怖笑 第三話 

★「聞くだけで話せる」 友好的? な話である。 あるとき宇宙人がついに地球にやってきた。人類が待ちに待った瞬間である。えらい騒ぎになり、プレミアム元年という暦まで出来上がった。 彼らは友好的で知性的で親切な種族であった。文明も進んでいて人類に有…

一寸の恐怖笑 第二話 

★「警備員の恐怖」 大きなビルの警備員の話である。 いつものように彼が高層階を夜間巡回していると、目の前を人の影が横切った。 いや失礼、横切ったのでなく、上から下へと落下していったのだ。 警備員は心中、えらい事になったと思いつつ、急いで下へ行く…

一寸の恐怖笑 第一話 

★「偽りの星」 宇宙時代の話である。人類は縦横無尽に宇宙を飛び回っていた。 あるとき見知らぬ惑星から救助信号が送られてきた。 どう聞いても、か弱い女の声で「たすけてーっ!!」と聞こえるのだ。 慈悲深い人間の事であるから、その信号をキャッチすると…

子供が一人。それもあまり賢そうに見えない子供が一人、ビルの屋上にいる。 大きなこうもり傘を手にし、今にもそのビルから飛ぼうとしている。そこに居合わせた男が驚いて言った。 「君やめなさい、危ない! そんな傘1本で、こんな高いビルから飛べるとでも…

頭の良くなる本

「僕みたいな劣等性が本当に頭が良くなるんですか?」 入試を控えた学生が博士に訊いた。 「ああ、この本を読めば必ず頭は良くなる。わしが保障するよ」 学生はその分厚い本のページを捲って呆然としてしまった。 「な、なんですかこれ?」 象形文字の羅列で…

恐ろしいDVD

怖いDVDがあるという。なんでも噂だと凄い動画で、それを観てショック死する者が続出しているらしい。恐ろしい残虐映像でも映っているのだろうか? それは並みのホラーなどではなく恐怖の範疇を超越していて観たものは食事も喉を通らず、泣きながら餓死して…

角(つの)

ある時、カオリの頭に小さな角つのが生えた。それはあまりに突然だった。カオリは悩み苦しんだ。無理もない。彼女は高一になったばかりの乙女なのだから。 何の因果か、呪いか、先祖に鬼がいたのか、さっぱりわからない。可愛くて男子に人気のあったカオリは…

電車で

電車に乗った弥太郎と熊さん。 弥太郎が言った。 「この電車に乗ったらおいら何だか眠くなってきたよ」 熊さんが答えた。 「そりゃ、そうさ。 だって線路の下に枕木が敷いてあるからよ」 おしまい ※画像はO-DANからお借りしています

すばらしい人間

博士はクローン技術を駆使し、すばらしい人間を作り上げた。 強靭な身体はブルース・リー、頭部は、渋いジャン・レノからDNAを拝借した。 ちょっと違和感があるが、それなりにすばらしい人間である。しかし、完成したその人造人間は、なぜか動く気配がない。…

密室殺人

ボスが密室殺人をやると言うから俺たちは集められた。もちろん俺らは殺しのプロ集団だ。 「いいか、この家の中の奴がターゲットだ」 ボスの声は怖いし、逆らうとヤバイから言うとおりにするしかない。 ボスの計画を説明しよう。 殺しのターゲットは今この小…

催眠術の輪

「だから、確かに私が彼女を殺したのかも知れません。でも……」 「でも、どうした?」 テーブルの上の灰皿でタバコをもみ消しながらニヒルな三谷刑事が言った。薄暗い取調べ室である。そう訊かれた田中という男は記憶をたどりながら答えた。 「私は、催眠術に…

熊さんと弥太郎の会話。 「大変だ熊さん! ニュース見たけど、船の遭難事故だよ。嵐で川を渡る小船が転覆したんだ」 「そうか、そいつぁ運が悪いね」 「それが、転覆したおかげで乗っていた人は命拾いしたんだって」 「嘘だろ! 弥太郎、そんな変な事はあり…

雪の日の記憶

――雪が降っていた。 辺り一面の白銀世界が眩しいほど輝いて見える。私は雪の深さに足を取られながらぎこちなく、時々倒れそうになりながらも懸命に歩いていた。頭の中に霧がかかっていて意識がはっきりしない。 記憶は断片みたいに曖昧なままだ。そして妙な…

冥土(めいど)

「八っつぁん、人は死んだら冥土に行くのかなあ……」 「そりゃ、そうよ大体昔からそう決まってるよ!」 「ちょっと心配なんだけど・・・冥土ってどこの国なの?」 「弥太郎、変な事きくねえ・・・冥土は日本だよ」 「どうして分かるの?」 「メード・イン・ジ…

キューピット

ピンク色の空から、可愛いキューピットが舞い降りた。 そして矢を構え、ベンチのカップルに言い放った。 「やい! 有り金残らず出せ!!」 「……!!!」 END ※画像はO-DANからお借りしています

選択

俺は海賊だ。7つの海を荒らしまわったツワモノだよ! 今回はさすがの俺もちょっと困った。 ある時俺は大西洋のど真ん中で、人魚と出会ったんだ。ものすごい美人でよ、おまけにこっちを見て手なんか振って男を誘う目つきをするんだ。 すっかり虜になっちまっ…

みくじ

正月の神社の境内は賑わっていた。 初参りに八っつぁん。熊さん。与太郎がおみくじを引いた。 「あれっ、凶だよ。やだねえ」 と八っつぁん。 「あ、俺も凶だよ」 熊さんも凶だ。 「僕は吉を引くよ」 そう言った与太郎までもが凶だ。 八っつぁんが巫女姿のバ…

The Wishgiver (ウィッシュギヴァー)  

ここに人の願望を叶えるものがいました。名をウィッシュ・ギヴァーといいます。彼は妖精と魔族の混血で鱗のあるちょっと不気味な姿をしていました。ちょうどそれは… そう、あの昔の映画グレムリンを想像していただければそう遠くないと思います。 彼の仕事は…

サンタ苦労ス物語

彼はちょっと困った顔をして街を眺めていた。額には深い何本もの皺があり、白くて長い髭を生やしていた。おまけに赤い帽子と赤い服という一際目立つ格好で、黒いベルトに長いブーツを履いていた。 だから誰が見ても彼がサンタクロースだとわかったと思う。け…