発狂した宇宙人

書き溜めた短編(S&S)をビヨンドで動画化のご紹介、短編(テキスト版)の掲載その他雑記などのブログです

猫好き

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「なあ美香、俺さあ、この頃、猫のナナの言葉が解りかけてきたよ」

 

「うそでしょ!」

 

「いや、ほんと」

 

 ナナがツトムに、すり寄ってきた。

 

「ミャーオ、ミャーオ-、ミャーオ~」

 

「美香、今なんて言ったか解った?」

 

「さあね、ただ鳴いただけでしょ!」

 

「違う、違う。きょうは暑かったねって言ったんだ」

 

「まさか、そんな」

 

「いや、ほんとだって」

 

「ミャーオ、ミャーオ、ミャーオ-、ミャ、ミャアァー、ミ~~」

 

「今のは、わかった?」

 

「あんた、猫語が解ってきたねだってよ」

 

「そんな、ÄÆфÅ?ÇжČ?ËĘΘ√Ē!жфэΕ?ŒØ~Ō・ŚŠÛэЫÚŪ」

 

「なに? 美香」

 

「ÄÆ∑Å? Ë♯∂Ē!ÎÏÌ∬Ī?§”“¶” ÇĆČ?жфэΕ」

 

「たいへんだ美香! 今、おまえなんて言った?」





                 

                 おしまい

 

 

 

 

                                                   ※画像はいらすとやからお借りしています

ミケランジェロの空

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 ミケランジェロというのは猫の名である。中二の祐二が単に毛が三毛だったので、思いつきでつけた呼びづらい名前だ。

 

 だから、祐二はミケランジェロなんて猫を呼んだためしがなく、大抵はミケと呼んでいる。だからこの芸術的な名前もほとんど意味をなさない。

 

 このお話はこのミケランジェロと言う猫が主役である。

 

 ミケランジェロはとても大きい雌猫で普段はおっとりしていて大変賢い猫なのだが、その賢さと言うのが半端ではない。なにしろ人間の言葉、或いは思考を理解できるのだ。

 

 なぜかというと、実はこのミケランジェロの正体はエイリアンなのである。

 

 こう書くと読者は驚かれるかもしれないが、昔から猫は、例えば日本では化け猫などにされて恐れられた事もあったし、特にヨーロッパの国々で、十三日の金曜日に黒猫を見ると不幸がおこるという迷信が近代まで蔓延っていたくらいだ。

 

 だから、猫たちがずいぶん酷い目に遭ってきたのも事実だ。猫には人知れない不思議な一面がある。

 

 鋭い読者の中には猫がエイリアンだと聞いてさほど驚かず「なるほどね」などと言って薄笑いを浮かべる方もいるかもしれない。

 

 ミケランジェロがどうしてエイリアンなんかになったのかと言うと、これはもう何世紀も時代を遡らなければならない。

 

 はるか昔、エイリアンの乗った飛行体が深い森に不時着して、中にいた黒い影のような生物が、たまたま好奇心満載でそばに寄ってきた一匹の猫に取りついた。

 いわば寄生したのだ。彼らは特定の形を持たないからすぐにそれが出来、猫の脳内の細胞を食べて脳に住み着いた。そして他の猫たちに感染していった。

 

 今日まで彼らは猫の中で何食わぬ顔で時代を過ごしてきた。

 

 ある程度の数を維持しながら、しかも増えすぎないように。

 

 彼らは人の言葉がしゃべれるのだが正体が明るみに出るのを警戒して(時たま、人前でしゃべってそれがユーチューブなどで流されたりしているが)人前では決して喋らない。

 ミケランジェロは人なつっこい猫で、必要以上に人間に懐いていたので、エイリアン仲間からはいつも白い目で見られていた。

 

 そんなある日の事、時期的に開かれる猫の会議(エイリアン会議)でダヴィンチと言う顔の大きな猫が、三十匹近い猫の前でこう言った。

 

「なあ、そろそろ人間達に寄生して、世界を我らの物にしようではないか」と。

 

 そこはいつもの公園集会所ではなく、裏山の洞窟の中であって、その会議の秘密性と重大性を充分にうかがわせた。

 

 サバトラのダヴィンチと言う雄猫は、仲間内で一番の過激派で、いつも人間界を征服することばかりを考えている恐ろしい猫(エイリアン)なのである。

 ダヴィンチの考えでは、人間達の主要人物、例えば政府や官僚の上層部の人達に寄生してしまえば、とりあえず日本を我がものに出来るし、それに俺は猫でいる事にもう飽きた、と言うのだ。

 

 ダヴィンチは押しが強くて気性の荒い、行動力のある猫であったから皆もその意見を聞かないわけにもいかなかった。

 

 だがそれに真っ向から反対したのが、他ならぬミケランジェロだった。

 彼女(雌猫なので便宜的な意味)は猫一番の穏健派で、これからも今まで通り、人間界でうまくやって行こうと言うのがその主張だった。他の猫たちもどっちに付いたらいいかわかないので態度を決めかねていた。

 

 そしてミケランジェロがこう言った。

 

「ねえ、ダヴィンチ。あなただって人間に飼われているのでしょう。食べ物や寝床にだって不自由しないはずなのに、人間に取りつくなんて酷い考えだわ。わたしは先祖の教えを守り今後も人間と共存していくつもりよ」

 

「おい、ミケランジェロ。なにを甘いこと言ってんだ。おまえも焼きが回ったものだぜ。我らは人間より優れた生き物なんだぞ、とうてい猫でなんかいられるものか。俺が人間界を支配した暁にはお前を幹部にするつもりだから、黙って俺のいう事をきけばいいのだ」

 

「いや、そうはさせない。どうしてもそうするなら、このわたしを敵に回して、本気で戦う事になるわ」

 

ミケランジェロ、おまえ正気か!」

 

 その時のミケランジェロは、普段のおっとりした猫ではなかった。まるで山猫のような鋭い猫だった。

 

 彼女は自分をとても可愛がってくれる祐二や、その家族に想いを馳せていた。ミケランジェロは祐二たち大野一家に愛情を感じていて、彼らの脳が喰われてしまう光景を想像するだけで吐き気がするのだった。

 

「おい、ミケランジェロ! 俺に逆らうなら容赦しないぞ」

 

 ダヴィンチが凄みをきかせてそう言った。それは最後の忠告でもあった。だがミケランジェロは一歩も引かなかった。

 

 両者の間に緊張の糸がピーンと張りつめた。猫ギャラリーが静かに見守る。



     ◇    ◇



 その夜ミケランジェロが帰って来た時、祐二はとても驚いた。

 

 なにしろ血だらけで、片目はふさがり、よろよろと歩行さえままならないのだ。

 

 祐二は訳も分からず、ただミケランジェロを抱きかかえた。すると耳元でミケランジェロがなにか言ったような気がした。

 

ダヴィンチはもういない……」

 

 それがミケランジェロの最後の言葉だったけれど、祐二はまさか猫がしゃべるはずがないと思っていたのでその言葉を聞き取れなかった。

 

 涙が止まらない祐二がまだ温かいミケランジェロの体を抱きしめた時、ミケランジェロの脳裏には故郷の星の灰色の空がくっきりと映っていた。

 

 

 

 

                  おしまい

 

 

 

 

                    ※画像はO-DANからお借りしています

 

公園にて

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 美奈が俺の目をじっと見つめて言った。

「わたし……  隠していてごめんなさい」

 美奈の奴、いきなり告るのかと思って俺の心臓がドキンとした。なぜって俺は女にもてる性質(たち)だから。
 

 季節は秋。枯葉の落ちる公園のベンチに俺たちは二人では座っていた。

 

「……わたしねえ、実は超能力があるの」
 

 俺は美奈の真剣な顔が可笑しくて吹き出しそうになるのを懸命に堪えた。

「うそだろ、テレパシーでも使えるのかい?」
 

 俺はちょっと、ちゃかすようにそう言った。

 

「いいえ、そういうのじゃないの」

 

「じゃあ、どういうの」

 

「わたし心の中で念じたものに相手をなりきらせることができるの」

 

「どういうの。それ?」

 

「ある人にあなたは鳥ですって念じたら、その人自分を本物の鳥だと思い込んじゃったの。そしてコオロギを食べたわ。もちろん生きたままでね」

 

「――ぷっ!」
 

 俺は堪えきれずに笑ってしまった。

 

「それで、そいつ空でも飛んだのかよ?」

 

「いいえ、それが……」
 

 美奈が悲しい顔をした。

 

「その人、空を飛ぼうとして崖から落ちて死んじゃったの」

 

「まさか……」

 

 俺は一瞬真面目な顔をした。

 

「わたしねえ。一度相手をそういうふうにしたらもう元には戻せないの」

 

「――そうなの」

 

「だから、それ以来ずっと超能力を封印していたの」

 

「……」

 

「でも、わたしの悪い虫がまた騒いじゃって。またやってみたくなったの」

 

「へえ、それで?」

 

「相手が人間だと危険でしょ、だから今度は相手を動物にしたの」

 

「動物ねえ。へえ、で、どうだったの?」

 

「やっぱり、見事に超能力の効果はあったわ。超能力が効いたのよ」

 

「……」

「太郎! ごめんなさい。あなた本当は犬なのよ」

 

「はあ? 何言ってんの、よせよ変な冗談」

 

「まさか、わたし、自分を本当の人間だと思い込んだあなたが言葉までしゃべるとは思わなかったわ。凄すぎよ」
 

 俺はなぜかその場から駆け出した。茉奈のやつ悪い冗談もいいかげんにしろ!

 

 ――あれ? ところで、なぜ俺首輪なんかしてんだろう?

 

 俺は絶対鏡なんか見ないぞ!

 

 

 

 

                    おしまい

 

 

 

 

 

                  ※画像はO-DANからお借りしています

 

 

 

 

へんな長寿

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「私は長年、不老不死の探求をしてまいりましたが、この度ついにそれに近いものを完成いたしました」
 

 額の広い聡明そうな博士が意気揚々とそう言った。

「それに近いと言いますと、どういうことでしょう博士?」

 研究発表のホール会場に詰めかけた大勢の記者の一人が質問した。

「私は不老とはいかないまでも、人間の寿命を著しく長くする薬をやっと作りあげました」

「長寿ということですか」

「そうです。みなさんは哺乳類の寿命を決定しているものはなんだかご存じですか」

「染色体上のテロメアが関係していると聞きましたが……」
 

 にわか仕込みの知識で報道記者が答えた。

「そうです。細胞分裂時に短くなる染色体上のテロメアと呼ばれる配列があり、動物体細胞ではそれを延長できず、その為に寿命が尽きてしまう」

 

 ホールには大勢の人々が博士の言葉と一挙手一投足に細心の注意をはらっている。

「私は最初このテロメアに細工しようと懸命に研究しましたが、どうしてもそのようなことは不可能でした。技術的な壁に突き当たってしまったのです。だから思い切って発想を転換したのです」

「なるほど、どんなふうにです?」

「私は心臓の鼓動に目をつけたのです」

「鼓動ですか?」

「ええ、そうです鼓動です。哺乳類の寿命は鼓動のスピードと密接な関係があるのです。たとえばネズミの鼓動はとても速い。反対に像の鼓動はとても遅い。両者の寿命を比べてみてください。ネズミは約三年、そして像は約八十年。鼓動の遅いものほど長寿だ。単純明瞭なる事実です。まあごく一部に例外はあるにしても」

「……それで?」

「私は鼓動を抑え、人間の寿命を二百歳にまで延長する薬を発明しました。この薬を服用した人間は百歳でも、五十代の若さを維持できます」

「それは凄い薬ですねえ」

「はい。この薬はこれから先、長い年月を必要とする宇宙探検に役立つでしょう。場合によっては人間の寿命を五百歳にまで引き延ばせる」

「それは凄い、たまげました。素晴らしい」

「今日は、親愛なる私の助手に実際にこの薬を飲んでもらいましたので、皆さんにご紹介致しましょう」
 
 

 さっきから博士の横にいた若い助手がとてもゆっくりと頭を下げ挨拶をした。

「みーーーーーーーーーーなーーーーーーーーーーさーーーーーーーーーーん。わーーーーーーーーーたーーーーーーーーーし………………」
 

  ――日が暮れた。

 

            

 

 

                   おしまい

橋の上で

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 その青年は思いつめた表情をして橋の上に立っていた。峡谷にかかる鉄橋の下は足が竦むほどの眺めである。青年はひどく落ち込んだ様子で橋の欄干に足をかけた。

 

 ちょうどそこに分別のありそうな老人が通りかかった。まるで水戸黄門のような風貌。

 

「お若いの、おやめなさい!!」

 

 老人はそう叫んで青年を呼び止めた。かなり大きな声だったので青年の決心が鈍った。

「どうか、とめないでください!」

 

「いや。止める、止めるぞ。だいいち命を無碍にしてはいかん! とにかく訳を話しなさい。訳を……」

 

「……」

 

 沈み込んだ青年の表情。まったく浮かない顔だ。

 

「その顔は失恋でもしたのかい?」

 

 青年は黙って頷いた。

 

「ほう、そうか。辛いであろう、苦しいであろう。さぞ相手は美しい女なのであろうな、わしも昔とても気立てが良く上品で見目麗しい女に恋をした事がある。しかしなあ相手はわしをさておき別の男と一緒になってしまった」

 

「……」

 

「大失恋じゃった。あの時は死ぬほど辛かったぞ。しかし、わしは耐えた。ぐっと堪えた。相手を恨まず耐え忍んだのじゃ、わかるかのう」

 

「……」

 

「女など、星の数ほどいると思いなされ、時間がやがてあんたの心を癒してくれるじゃろう。だから女のことは忘れるのじゃ、忘れてしまいなさい。なあ」

 

「……」

 

 青年の顔は依然として冴えない。

 

「いいかな。女など…… 女なんて」

 

 青年が泣きそうな顔をして老人の言葉を遮って言った。

 

「僕が好きになったのは男子ですよ、体育の先生なんです」

 

「うっ!」

 

 直後に青年の姿は橋の上から消えた……。

 

 

 

 

                    おしまい

 

 

 

 

 

                  ※画像はO-DANからお借りしています

 

 

 

 

●このストーリーはユーチューブで動画化してあります。

 興味のある方はどうぞ


橋の上で

 

悪魔就職する

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  その悪魔は自分の奇抜な発想に多少酔っている節があった。そう、彼こそは醜悪で怖い顔に密かな笑みを隠したあの魔族の代表である。

 昨今は地獄コロナの影響もあり、悪魔の仕事がめっきりと減った。それに最近の人間たちは自己中が多く、地獄に落ちてきて悪魔となる者の数が増え、その結果、魂を集めると言う仕事が過当競争になってしまったのだ。魂集めの市場は確かに拡大しているのだが、個々の仕事は逆に減っているという始末だ。

 そこでその悪魔は人間界で仕事を見つけようと思い立ったのだ。奇抜極まりない発想だから地獄の君主ベルセブブやサタンがどんな顔をするのかは判らないが、もともと悪魔の神経は極太で他者がどう思おうと意に介さないのだ。

 逆にそれは悪魔の歴史が始まって以来の事だから、誰もが俺の行動力を認めてくれるに違いない――。その悪魔は勝手にそう思った。また悪魔は何もしないと言うことが苦手だし、誰かを不幸にしなくてはいられない性分なのだ。

 人間界は遠いようで近い、実は地獄は人間界に並行して存在している。次元の隙間を通るならば僅か数分で行き来できるのだ。

  悪魔は高級なスーツをあつらえ早速面接会場に向かった。二次面接である。実を言うと悪魔は既に書類選考で三十社あまりの企業ではじかれていた。なにしろ履歴書の学歴欄に魔王大学院で学ぶと記し、資格蘭には魂の管理資格を保有するとし、自己PRのスペースには私に出来ないことなどありませんと書いたのだから、無理もなかったかもしれない。

 しかし悪魔の採用に前向きな企業がたった一社だけあった。それは某地方テレビ局で最初は悪魔太郎の名を見て面食らったが、好奇心旺盛なプロデューサーの高橋は何かしらの鼻を効かせ面接の運びとなったのだ。もしかしたらタレントとしての起用も有り得ると踏んだのである。

 悪魔が上等の黒いスーツを着て面接官の前に座った。面接をするのは高橋をはじめ、テレビ局の幹部連中計5名であった。

「志望の動機は……」という質問に悪魔は自信に満ちた表情をつくってこう答えた。

「仮に私が御社に入社できれば、この小さな貧乏くさい地方局を、世界一のテレビ局にしてさしあげましょう。私は何でも一番でないと気が済まない」

 幹部連は顔を見合わせて驚いていた。

「それは、素晴らしい動機ですが。その具体的な方法についてお聞きしたいものですねえ」

「それは魔力です。私は魔族ですよ」

 ここで面接官の質問は途切れてしまった。四人は悪魔の採用を見送ろうとしたが、高橋のたっての頼みで一ヶ月の試用期間が設けられる事になった。

 

 ――高橋の思惑は的中した。悪魔の活躍は目覚ましかったのである。あらゆる番組を制作し、想像し、創作した。悪魔は素晴らしいクリエイターとしての素質を十二分に持ち合わせていたのだ。彼の眼は生き生きと異様に輝いていた。

 例えば、『地獄のジェットコースター』はゲーム番組で大掛かりなジェットコースターのセットが建設されて、問題に答えられないものは容赦なく地獄の血の池に叩き落されるという嗜好だったし、『死ぬまで歌え』はとにかく知っている歌を岩山のセットの中で歌い続け、歌えなくなったものは岩の影から出て来る鬼に食われるという番組だった。中でも圧巻は汚職政治家とそれを告発する視聴者が命賭けで行うロシアン・ルーレットでの対決ショーだった。

 六連発の銃に一発の弾をこめて交互に打ち合うのだ。番組名は『くたばれ、悪党』で、息をもつかせぬ演出で高視聴率をたたき出した。

 安心してほしい。これらの番組の中で実際に人が死んだわけでなく、すべて演出であった。しかし、視聴者の中にはそれを本気で受け取り、心臓発作で亡くなる者まで出る始末だったし、残酷だというクレームは後を絶たなかった。にもかかわらず、悪魔の製作したテレビショーは高視聴率が続き、お化け番組が誕生したのである。

 国民は番組の悪口を言いながらも、その番組に魅入られ、吸い寄せられ、子供は早く寝かしつけられて親達は手に汗を握って番組に没頭したのである。その番組の放送される金曜の晩は誰もがリアルタイムで会社員は残業もせず、それを見続けたのである。

 

 しかし、まことに残念なことに悪魔はテレビ局をまもなく解雇された。人を飽きさせないお化け番組は終りを告げたのだ。

 なんと悪魔はスポンサーからの謝礼を魂で徴収してきたのである。慣習とは恐ろしいもので悪魔は金銭には異様なほど淡白で、魂のみに価値を見出していたのだ。そのおかげで一流企業から大勢の死人が出てしまった。それでも周りは彼が本物の悪魔だとは夢にも思わなかった。だから幹部連が顔をしかめ、奴はまるで悪魔みたいだと言ったのが印象に残る。

 

 悲嘆にくれたのは高橋プロデューサーであった。彼はしばらく呆然として仕事さえ手につかない状態であったが、数週間の休養をとって見事に職場に復帰した。

 しかし高橋が新たな採用希望者の履歴書の中から天使ミカエルの名を見たときは、たいそう驚いた。

 志望の動機欄には世の為、人の為と書かれており、特技は浮遊だそうだ。

 高橋はその履歴書をしばらく眺め、一瞬考えていたが、

「もう懲りたさ、勘弁してくださいよ」

 

 ――と溜め息をつき、その履歴書をまるめてごみ箱に放り投げてしまった

 

 

 

                     おしまい

 

 

 

 

 

 

 

                                                             ※画像はO-DANからお借りしています

タイムマシンクイズ

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●問1

 

 博士はタイムマシンをつくりました。

 人間を過去にも未来にも連れて行ってくれるマシンをつくりだしたのです。

 

 さて、そこで問題です。

  そのマシンにまずあなたが乗り込みます。そして十年後に目盛りを合わせます。

 まだ発進のスイッチは押しません。

 次にそのマシンがすっぽり入るほどの大きなタイムマシンをもう一台用意します。

 そしてその中にあなたの乗ったマシンを収容します。そこでそのマシンにもう一人の誰かに乗ってもらい、目盛りを十年過去に合わせます。

 さて、ここで二台のマシンの発進スイッチを同時に押した時、あなたはどうなりますか?

 

 予想される結果を答えなさい。

 

 

 

 

●問2

 まず、タイムマシンが実在したと仮定します。

  あなたは高鳴る心臓の鼓動を抑えられないまま。タイムマシンに乗りこみました。

そして目盛りを十年後に合わせ、深呼吸をしてから発進スイッチを押しました。

 

 そこであなたは思いもよらぬことに気づきました。

 タイムマシンは確かに十年後の同じこの場所に着くはずです。しかし十年後のこの場所とははたして地球上なのでしょうか? 

 地球は太陽を中心にして自転しながら軌道を描いて回っているのです。となるとタイムマシンは地球上よりも宇宙空間に現れる可能性のほうがはるかに高いのではないでしょうか。

 あなたは一瞬心臓が凍ったような感覚に襲われました。タイムマシンは時間を移動する装置で空間を移動する乗り物ではないはずです。

 

 さあ、どうしましょう。あなたが助かりうる最善の方法を考えましょう。

 

 

 

 

 

●問3

 まず、この話をよく読んだ上で次の問いに答えなさい。

 

 あなたは自由にタイムマシンを使う事が出来ます。

 喜んだあなたはすぐにタイムマシンに乗ってみたくなりましたが、未来にいきなり行くのも怖いし、過去のほうが既に自分が経験しているのだから安心だと考え、とりあえず一日前、きのうに戻ってみることにしました。

 するとそこにきのうの自分がいました。

 きのうの自分は幽霊でも見たような顔をして驚きましたがあなたは予想していたので驚きません。

  過去の自分と会話をして話に熱が入りましたが、そこであなたは、可笑しなことに気づきました。

 それは記憶についてです。今、あなたは過去の自分と会ったという記憶を脳に保存しました。

 しかし過去のあなたも今、きのうの記憶を保存したはずです。

 過去の自分と今のあなたは同一人物であるはずです。

 なのにあなたの記憶には、なぜきのう未来の自分がやって来たという記憶がないのでしょうか? 過去の自分と今の自分はまったく別の人間なのでしょうか?

 あなたにはなにがなんだか解らなくなってしまいました。

 

 さあ、その理由を考えましょう。

 

 

 

 

 

 

                 

                  ※画像はO-DANからお借りしています

 

 

 

 

 

●このストーリーはユーチューブで動画化してあります。

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タイムマシンクイズ