呆れるべき真相(コメディ)
●事件その一
「ワーッ!! ヤーッ!!」
ドラキュラの屋敷から今日も悲鳴がこだました。
このところドラキュラ伯爵の屋敷で夜毎に絹を裂くような女の悲鳴がする。
――事件か。
早速、時代錯誤のホームズみたいな探偵が真相の究明に乗り出したが、探偵はその真相をあまり大きな声で語らなかった。
声の主はドラキュラの奥方で夜会に出かける際に、この絶叫は起こるのだ。
――鏡の中に顔がないのじゃお化粧が出来ない。
悲劇だ。しかも奥方は最近ひどい健忘症で毎夜そのことを忘れて鏡に向かうと言うのだ。やはり恐ろしい事件であった。
おしまい
●事件その二
「ああ、またか!!」
痛々しい慟哭。
それは老博士の悲痛な叫びであった。郊外にある古びた研究室から毎夜博士の絶望的な叫び声がする。
またまた事件か。早速、ホームズ気取りの探偵が真相の究明に乗り出したが、探偵はただ苦笑いをするしかなかったようだ。
現場に行くとあちこちにダイヤモンドが無造作に転がっていたと言う。助手の証言はこうだ。
「いやね、探偵さん。博士は今、錬金術の研究に没頭しているのですよ。ですが出来てくるのがダイヤばかりで、金がどうしても出来ないのです。だから博士は悔しがっているのです。尋常じゃありませんよ」
「ああ、またダイヤか!! だめだ。だめだ。失敗だ!!」
泣き喚く博士に助手は言う。
「博士、あなたはもう大金持ちなんだから、いい加減に錬金術に見切りを付けたらどうでしょうか。ねえ博士」
「いや、やだ。わしはどうしても金をつくりたいんじゃ!!」
ボコッ! 助手が見守る中、今度はプラチナが出来た。
おしまい
●事件その三
「うわーっ!!」
という絶叫。なんでも話だと宇宙人が百貨店で暴れていると言う。大事件だ。
またもやホームズみたいな探偵が真相の究明に乗り出した。現場に行けば顔かたちからして宇宙人みたいだ。勇気ある探偵は身の危険も顧みず、果敢に宇宙人に接触した。
「ど、どうしました?! 大丈夫ですか」
「ああああああーーっ!!」
宇宙人は半狂乱だが観察眼の鋭い探偵は彼の背中にジッパーを発見した。
調査によると彼はただのエキストラで、あるSF映画の撮影中、誤って転倒して記憶を失くしたらしいのだ。
そして百貨店のショーウインドウに映る姿を見て、自分が宇宙人であると思い込んでしまったようだ。
探偵は懸命に彼の記憶を呼び戻そうとしたが彼は『騙されものか!! 僕は宇宙に帰る!』と叫んでもっか逃走中である。かなり面倒くさい事件だ。
彼は宇宙人衣装の中に隠してあるアルバイトニュースを、はたしてどう読むのだろうか?
おしまい
※画像はO-DANからお借りしています
●このストーリーはユーチューブで動画化してあります。
興味のある方はどうぞ