発狂した宇宙人

書き溜めた短編(S&S)をビヨンドで動画化のご紹介、短編(テキスト版)の掲載その他雑記などのブログです

宇宙のボールペン

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  フェルミのパラドックスと言うのは、なぜ未だに地球以外の知的生物と接触できないのかという疑問から誕生したらしいが、ある時、チリのアタカマ砂漠にある電波望遠鏡群が宇宙から来た謎の電波をキャッチした。

 

 謎というのはこの電波が自然電波でなく、人工電波だという意味だ。この電波を解析するために、膨大な計算が必要となったが、それはスーパーコンピュータによって漸く解読された。その内容をまとめればこうだ。

 

「親愛なる宇宙の友よ、我々はボールペンの部材を探している。実は我々はボールペンづくりによって生計を立てているのだが、そのボールペン部材が不足している。そして貴方たちの星がその部材を保有していることがわかった。どうか我々にその部材を提供してはくれまいか。どうかお願いする。親愛なる友よ」

 

 これには世界中の科学者が苦笑した。依りによってボールペン? とは。

 しかしその電波がどの星から来たのかさえ、どうしても突き止められなかった。

 

 有識者によって様々な議論がなされ、『ボールペンの部材ぐらいなら、いくらでも提供しましょう。それで宇宙人が感謝してくれ、友好関係が築けるなら迷う事はない』という結論が出た。

 そして宇宙に向けて、地球からメッセージが返された。こんな風に。

「親愛なる宇宙の友よ。解りました。我々の星にはボールペンの部材が豊富にあります。貴方たちに喜んでボールペンの部材をご提供しましょう。で、具体的にはどんな部材でしょう?」

「ありがとう」という交信が返ってきた。

 しかしそれを最後に交信は途絶えた。というより交信が出来なくなった。

 それというのも、その直後に筒のような巨大な円筒が宇宙空間に現れ、地球に向かって迫り、地球を半分呑み込んでしまった。

 ああ、それは遥か遠方から見て、まさにボールペンだった。地球を先端のボールにして出来上がった超ド級の巨大ボールペンであった。

 しかし、このボールペンを使うものがいるのだとしたら、気が遠くなるし、頭がおかしくなる――。

 それにしても、地球が青いボールペンにされるなんて……?

 なぜ火星を先に使ってくれなかったのだろう……。

 

 ――悔やまれてならない。

 

 

               おしまい

 

 

 

                   ※画像はO-DANからお借りしています