記念すべきもの
医師が手術をしていました。時は十九世紀。西部劇の時代です。彼は若く優秀な医師ではありましたが、まだ経験不足の新前です。
患者は悪漢グループに銃で撃たれ、瀕死の重傷を負った保安官助手でした。
やがて手術が始まりました。患者の胸部に深く埋まった弾を摘出できればこの手術は成功です。若い医師は真剣そのもので手術をして、首尾よくピンセットで弾を取り出しました。
そしてニコニコと笑いました。と、ピンセットの先が滑って弾がベットの下に滑り込んでしまったのです。医師は慌てました。
そして彼は記念すべきものを失くすものかとベッドの下に潜りこみました。で、医師は床下をくまなく探してついに弾を見つけたのです。
彼はため息をつきました。
そして再びそれを眺めてニコニコ笑いました。でもその時には保安官助手は既に死んでいました。
おしまい
※画像は「いらすとや」からお借りしています