発狂した宇宙人

書き溜めた短編(S&S)をビヨンドで動画化のご紹介、短編(テキスト版)の掲載その他雑記などのブログです

短編(S&S)

日曜大工

与太郎がノコギリを持って木材を切っている。そこにやって来たのが熊さん。 「あれ? 与太郎ノコギリなんか持ってどうしたの?」 「日曜大工だよ、棚をつくるのを親に頼まれたんだ」 「そうかい、感心だね」 「熊さん、でもこのノコギリぜんぜん切れなくて困…

推理小説

「与太郎、八っつぁんに聞いたけど、最近、おまえ読書家になったんだって?」 「ああ、そうなんだ。熊さん」 「へえ、で、どんな本読むんだよ?」 「推理小説だね」 「ほう」 「自慢じゃないけど、おいら、2~3ページ読んだだけで犯人が分かるよ」 「ほう、…

流行語

「熊さん、去年の流行語大賞なんだか知ってる?」 「さあ、確か三密じゃなかったかな? 与太郎」 「そうだね。熊さん。じゃあ、妖怪の国の不動の流行語はなんだか知ってる?」 「妖怪の国だ? そんなもん知るわけないだろう。与太郎」 「~はやく人間になり…

蘇生

優秀な博士が死者を蘇生させる薬を発明した。あえて名付けるならゾンビ薬とでも言おうか? 博士は助手に言った。 「君、どこかで死体を調達できないかな?」 助手は困った顔で答えた。 「それは無理でしょ、法に触れるんじゃないですか?」 すると考えて博士…

パトロール中警官が不審な男を見つけて職務質問した。 色々、訊いているうちに男が切れて怒鳴った。 「やい、俺はなにもしてねえよ! いい加減にしねえと撃ち殺すぞ!」 警官は驚いたが落ち着いて言った。 「おまえを銃刀法違反で逮捕する!」 しかし男は笑…

地獄の門

地獄の視察に来た二人の男が門から地獄に入ろうとすると、恐ろしい赤鬼が出てきて行く手を阻んだ。 鬼はこう言うのだった。 「門を入るなら何か、面白い話を俺様に聞かせろ。その話が面白かったら通してやる」 二人の視察人は少し困ったが、一人が懐からメモ…

ベッド

入院患者が医師に言った。 「最近、川で溺れる夢ばかり見るんですけど。私、夢がこわくて眠れません」 医師が頭をかいて答えた。 「この前、ウオーターベッドに変えたのが悪かったかなあ?」 ……?! おしまい ※画像は「いらすとや」からお借りしています

理由

ある時宇宙船に乗ってやって来た醜い女の宇宙人が美人ばかりを殺害し始めた。 すぐに軍が出動して宇宙人を拘束した。そして詰問した。 「おまえ達、地球人を殺して世界征服でもする気なんだな!」 すると醜い宇宙人が答えた。 「いいえ、単なる嫉妬です」 「…

金魚

ある時、一匹の雄の金魚が綺麗な雌の金魚の前で溺れそうになった。 それを見て驚いた仲間の雄金魚が話しかけた。 「金魚が水に溺れるなんて笑い話じゃないか。君、しっかりしなよ!」 するとその金魚が答えた。 「そうなんけど、僕は水に溺れたわけじゃない…

廃墟

県道から脇道に入ると、殺伐とした林道が続いていた。某テレビ局の取材班はその先の、今はもう廃墟と化した国立病院に向かって進んでいた。機材を抱えたまま車が入れない道を歩くのは骨が折れる。取材班の表情がいつになく厳しい。 足元に得体の知れない冷気…

雪男

険しいアルプスに一人の雪男が住んでいました。性質はいたって温順です。 彼は色々な話を考え、仲間達に面白おかしく話して聞かせるのが趣味でした。 そう。彼は今でいうショート&ショートの名人なのでした。 極寒のアルプスでは特にやる事もなく、いつも退…

溶かす

何でも溶かしてしまうという液体を発明した高名な博士が、なんだか頭を抱えて悩んでいる。そこに現れたのがテレビレポーターの青年だ。青年が質問する。 「どうしました? 何をそんなにお悩みなのですか。世紀の大発明をなさったというのに?」 「いやね、液…

ハエ

ある時、文才のある一匹のハエが複眼をきらめかせて言った。 「わがハエはハエである……」 そのハエが飛び立つと後を追ったもう一匹の文才のないハエがぼやいた。 「あいつハエーな……」 おしまい ※画像は「いらすとや」からお借りしています

世界びっくり疑?・事録スペシャル 七.

★将棋電王戦 プロ棋士とコンピューターソフトが対戦する模様を映像メディアが配信する将棋電王戦は記憶に新しいが、この電王戦が様々なドラマを生んできたのは言うまでもないだろう。 既にトーナメントやファイナル戦まで行われ、形勢はコンピューターの優勢…

世界

得体の知れない疫病ウイルスの流行。異常気象の到来。天変地異。 そして核戦争と続いて人類はついに滅びようとしていた。 荒涼と砂漠化した元大都会には鼠一匹生きてはいなかった。 そして地球最後の人間が死んでしまうと、もはや全ての概念が消え失せた。人…

――ある日会社から家に帰ると鬼が座っていた。 どうして鬼だかわかったかと言うと、毛むくじゃらの太い腕と原始人みたいな皮の服を身に着けていたからだ。なにより決定的なのが頭の角だった。びっくりして逃げようとしたが自分の家から逃げるなんてる理屈に合…

世界びっくり疑?・事録スペシャル 六.

★地球温暖化対策 ――総理による重大な発表 世界的な脱炭素社会の動向を受けてS総理はこの度、我が国は2050年までにCO2排出量を実質0にすると明言した。 但し、この実質0の意味合いを考察するとCO2排出が全くなされないという意味ではなく、排出されたCO2を浄…

記念すべきもの

医師が手術をしていました。時は十九世紀。西部劇の時代です。彼は若く優秀な医師ではありましたが、まだ経験不足の新前です。 患者は悪漢グループに銃で撃たれ、瀕死の重傷を負った保安官助手でした。 やがて手術が始まりました。患者の胸部に深く埋まった…

不気味な星

長い航海の果て、宇宙船がその星についたとき、期待した宇宙人に会えなかった。だから大方の関係者や科学者はがっかりした。というのも、その星はこれまで様々な観測がなされ、生命の存在は確定的だった。 原始的なアメーバ等の生育は確認できているし、昆虫…

御老公

御老公は諸国を漫遊していた。 そしてある藩で悪事を働く代官を見つけると、烈火のごとき怒り、 鞭で打つなどして、それはそれは酷い目に合わせた。 「黄門様、あまりに酷い!」 代官が悶絶して訴えると御老公は悪魔のように笑いながらこう言った。 「間違え…

味のある本

「なあ熊さん、あんた読書は好きか?」 「読書だ? 自慢じゃねえがそんなもんしたことねえよ、八っつぁん」 「たまには本でも読んで、教養を身につけなてんだ」 「何言ってる。そう言う八っつぁんこそ読書家のイメージないけどな」 「最近変わったのよ、おい…

匂い

与太郎、熊さんが電話で話している。 「熊さん、きょうの我が家の晩御飯は、おいしいウナギだよ」 「へえ…。いいねえ、俺もウナギは大好きだよ」 与太郎が、受話器をウナギに近づけて…。 「どう、いい匂いでしょ」 「ほんとだ・・・いい匂いだねえ、すごいね…

カネの成る木

「熊さん、けさのニュース見たかい?」 「なんだい、なんかあったかい、八っつぁん」 「なんでもよ、森の中でカネのなる木が、見つかったんだってよ」 「カネの成る木だって! へえーっ、そんなもんあったら一生安楽に暮らせるねえ、長屋暮らしとも、おさら…

鏡の眼

「実は……」 そう言いかけてその男は口篭った。やつれた顔の蒼い唇をした男である。どういうわけかその男は左目を押さえながら入ってきた。 ごくありふれた眼科の診察室である。水色のブラインドを光が通過して部屋の壁は薄いブルーに染まっていた。「どうな…

火を貸して

ある時、木星が煙草をくわえ、火星に近づいてこう言った。 「悪いけど、ちょっと火を貸してくれませんかね?」 火星が答えた。 「悪いけど俺の所には火がないんだ。火なら太陽に借りなよ」 「そうなんですか。わかりました。そうします」 太陽に向かう木星に…

魔法のバスト

魔法使いさながら、ある発明狂の博士が貧乳を大きく豊かにするブラジャーを発明した。 世の殿方は喜び、商品は売れると思われた。 が、ある時、好奇心いっぱいの若い女性が、それをつけて彼のもとに。だが、ラブホで彼氏は大きなため息をついた。 だってブラ…

自殺薬

恐ろしい保険金殺人が行われようとしていた。 標的は夫。妻の魂胆は、発明狂の博士が作りあげた自殺薬を使うこと。この薬を服用した者は一週間以内に確実に自殺する。しかも薬物反応はでない。 妻は密かに入手した自殺薬をワインに混ぜた。しかし夫はグラス…

占い

癌の告知をされた男が落ち込みながら占い師のもとを訪れた。 「僕は癌なんですが、この先いったいどうなるのでしょう?」 占い師が微笑んで答えた。 「勢いをきわめるな。運勢は発展運じゃ!」 三日後、男は死に妻が占い師のところにやってきた。 「あなた、…

世界びっくり疑?・事録スペシャル 五.

★人工知能による東大入試 この度、I博士はAIによる東大入試に挑み、これを見事に成功させた。他の五大学入試には数年前に成功していたので、今回の東大合格はまさに快挙だろう。 当然、有名各祇(SNS含む)にそのニュースは大きく取り上げられた。 だが東大…

火事場で

火事場で男がガソリンをまいている。そこに駆けつけた消防士が驚いて男に怒鳴った。 「あ、あなた! なんでガソリンなんか、かけているんだ! 気でも違ったのか!」 男が神妙な顔で答えた。 「いやね、私の家の保険、全焼でないと下りないんですよ」 「!!…