発狂した宇宙人

書き溜めた短編(S&S)をビヨンドで動画化のご紹介、短編(テキスト版)の掲載その他雑記などのブログです

短編(S&S)

独裁者

北の独裁者があるとき、失敗をした部下に腹を立てて怒鳴った。 「ああ、バカもの! どうして私の部下たちはバカばかりなのだ!! もっと優秀な奴はおらんのか!!」 するとその様子を見た、独裁者の臣下の一人が困り顔で言った。 「お言葉を返すようですが、…

エコカー

秘書が嬉しそうにこう言った。 「大臣、ついに空気で走る究極のエコカーが発明されましたよ。テスラも真っ青でしょうね!」 「ええ!? いったい誰がそんなもの作った」 大臣はなぜか不機嫌そうだ。 「作ったのは著名なE博士ですが」 と秘書。 「世間に知れ…

感情を映す鏡

そこは文化ホールのステージだった。そのステージに口ひげを蓄えた博士と、痩せて背の高い助手が立っていた。 博士は得意そうな顔をして、ステージ上の物に掛けられた黒い布をとった。 と、そこに等身大ほどの大きな鏡が出現した。 縁はシルバーで縦に長い鏡…

世はまさに宇宙時代でした。 人間たちは、何光年もある遠い星々にロケットで探検に行き、すぐ傍の月には宇宙基地が建設されました。 しかし月にはそれが、嫌で堪りません。 巨大なドームが張られ大勢の人間がやって来ます。口がきけない月は悲しくて涙を流し…

蛇たち

「凄いぞ、ついに蛇たちがバンドを結成するらしいよ!」 「へーっ。で、どんなバンドだ?」 「わからないかね? ヘビメタさ」 (´◉◞౪◟◉) ブー おしまい ※画像は「いらすとや」からお借りしています

生真面目なカニ

曲がったことが大嫌いなカニが嘆いた。 「ああ、僕はどうして道をまっすぐに歩けないのだろう!?」 ……? おしまい ※画像はO-DANからお借りしています

就職

「私はこの就職難の時代に、ほこり高き職につきますよ! 内定してるし」 「素晴らしい。で、どんな職業ですか?」 「清掃員さ」 「なるほど?!」 おしまい ※画像は「いらすとや」からお借りしています

透明

博士が言った。 「私が長年研究していた人体透明薬がついに完成するんじゃ。凄いだろう!」 その助手がちょっと苦笑いして言った。 「なるほど、博士。どうりで最近あなたの影が薄くなったわけだ」 「……」 おしまい ※画像は「いらすとや」からお借りしていま…

どくしん

垢ぬけない男が言った。 「僕はどくしん術をマスターするんだ!」 それを聞いた友人が言った。 「なるほど。読心術をマスターして彼女の心を掴むつもりだね?」 「いいえ、その彼女に振られたから独身術をマスターするんだ」 「…なるほどねえ、そっちのほう…

カタツムリの小説家

カタツムリの小説家に記者がインタビューした。 「先生の作品、最近ストーリーがマンネリだと読者から批判されてますねえ」 「ああ、わかってる」 「えっ? ご自分でもお認めになるのですか? 先生」 「ああ、認めるよ。私はどうしても自分の殻が破れないん…

恋心

学生のユウイチがためらいがちに言った。 「カナエ。最近、僕を避けてないか?」 「……そんな」 「だって、なかなか会ってもくれないじゃないか」 短大生のカナエが俯いて言った。 「だって最近、ユウイチが変わったから……。 以前のユウイチのほうがわたしは…

大きな望遠鏡

「だから、何が見えたというのですか?」 その質問に老博士は黙して答えなかった。 「どうしても世間に成果を発表出来ないとおっしゃるのですか?」 研究開発局の局長は真剣な顔をして博士に質問した。もう陽が沈み星々が輝きだした頃だ。研究所は小高い山の…

矛盾

「大統領閣下。私の発明しましたこの光線銃は全く無敵でございます。なにしろこの光線にあたったものは鋼であれ、ダイヤモンドであれ、超合金であれ、触れたものの全てを完全に蒸発させてしまうのですから」 その規律正しい、科学者であり、軍人であり、発明…

奇妙なひな祭り

――三月のちょうどそれは雛祭りの日の出来事だった。 あまり見栄えの良くない初老の男が、大通りの角の派出所に何かから逃れるようにしてやってきた。顔は痩せていて血の気がない。もっとよく観察すれば、男は息を切らし、表情は熱病にでも侵されたように虚ろ…

あなたはあした死ぬ

「あなたはあしたの正午に死にます」 その個性的な顔立ちの占い師は俺に向かい正々堂々とそう言い放った。 一介の会社員である俺は悪い冗談と思ったが占い師の眼は少しも笑っていなかった。その眼を見ているうちに俺はむかついてきた。会社帰りの街角だった…

氷のプリンセス

雪道で美しい娘を見つけた。 気分が悪そうで悲しい顔をしていた。 近づくとキラキラした氷の涙を浮かべている。 とても気品のある娘だった。 「どうしたのですか? なにかあったのですか?」 声をかけると娘は頽れるように、その場に倒れてしまった。 慌てて…

謎の円柱

あるとき地球に向けて大きな円柱が凄いスピードで迫ってきた。 それは途方もなく大きな棒のようなもので、正体不明だった。 科学者達もなす術すべもなくこれは地球の最後かもしれないと思った。 なんとそれの直径は地球と同じくらいあった。 猛スピードでそ…

自殺志願

男がビルの屋上から飛び降りようとしていた。 それに気づいた警察官が必死に怒鳴った。 「やめろ!君、死ぬんじゃない。早まるな!」 男が答えた。 「悪いけど俺は死ぬ気なんてさらさらないよ。幽霊になって強く生きるんだ!」 「んな……?!」 おしまい ※画…

盲目の三人

「象とはどんな動物ですか?」 ある人が、盲目の三人に尋ねると一人目はこう答えました。 「象とは太い柱のようなものです」 二人目はこう答えました。 「まるで大きな扇のようなものです」 そして三人目はこう答えました。 「硬くなったり、柔らかくなった…

応急処置

あるとき地球の回転が突然止まった。 すぐに神様に報告が入った。 「大変です! 神様、地球が止まりました」 「原因はなんですか?」 「わかりません、いま調査中です。どういたしましょうか?!」 「仕方ありません。応急処置として周りの宇宙の方を回して…

幽体離脱

――幽体離脱した能天気な老人がいた。 老人は自分の寝顔を上から眺めると、スイスイと楽しそうに窓から飛んで行ってしまった。 鳥の気分を充分に満喫した老人だったが、そろそろ辺りが暗くなってきたので、自分の体に返ろうとして一大事が起こった。 自分の家…

カラータイマー

あるときウルトラマンが病院に駆け込んできた。 「先生、胸のカラータイマーの点滅が止まらないんです。どうしましょう!」 医師が診察する。 「どれどれ、身体には別に異常はなさそうですねえ。最近なにか変わった事でもありましたか?」 「実は、生まれて…

宇宙のボールペン

フェルミのパラドックスと言うのは、なぜ未だに地球以外の知的生物と接触できないのかという疑問から誕生したらしいが、ある時、チリのアタカマ砂漠にある電波望遠鏡群が宇宙から来た謎の電波をキャッチした。 謎というのはこの電波が自然電波でなく、人…

過ち

――手術は困難を極めていた。難しい胃癌摘出手術だ。 転移の箇所もあり看護師は何度も私の額の汗をハンカチで拭った。迅速に作業しなければならない。ひたすらに医師である私は作業をする。長い時間を要したがなんとか手術は無事に終了した。 私はようやく安…

青い馬

僕がその馬を見つけたのは駅の近くだった。終電に揺られて、会社の新年会の帰りに若い仲間と三次会まで盛り上がって、仲間と別れ駅からふらふら歩いて帰る途中だった。 まだ酒が残っていたから馬を見ても驚きもしないで素通りするところだった。 だけど僕の…

出来そうもない七つの事 (ギャグ)

ロボットの献血。 ゴジラの調教。 金魚の行水。 キリストの仏門入り。 透明人間のレントゲン。 宇宙での逆立ち。 幽霊のフィギュア・スケート。 うーん… 出来そうもない。 ※皆さんも他に出来そうもない事があったらコメントくださいね! ※画像はO-DANからお…

世界びっくり疑?・事録スペシャル 四

不確定性原理によるアリバイの崩壊 この度、証人殺害事件で起訴された大物政治家の秘書であるK氏は当局に依って身柄を拘束される事となった。この事件は既に報道されているが、K氏のアリバイは大物政治家お抱えの敏腕弁護士によって立証された。 今回の大物…

薄氷の出来事

薄い氷の上に釣り人がいた。 氷に穴をあけてワカサギ釣りである。寒いから男は懐にカイロを入れていた。 しかし待てど暮らせどなかなかワカサギはかからなかった。 もう一度糸を引き上げて、ワカサギが掛かっていなかったら寒いので帰ろうと思ったとき、変な…

夢の中の記憶 最終話

最後の記憶 マンションに帰り、ドアに鍵を掛ける。胸の動揺が治まらない。夢の裏付けをしてしまったのだと思った。現実に私と太田青年がいる。そして夢の中に同じ分身のような人物がいる。そして彼らは私と太田青年に成り代わろうとしている。 あまりにも荒…

夢の中の記憶 8

第八日目の記憶 暗く低い雲の垂れ込めたある秋の日。私はそのホテルの見える丘に立った。 麻布のホテルMを地図上で見つけた時。ぞーっとするものが胸の内に込み上げてきた。しかしまだ半信半疑だった。偶々同じ名のホテルがあるのだと都合のいいように解釈…